迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「シドリウス様」
ショールを羽織ったフィリーネがシドリウスに声をかける。
顔を上げたシドリウスはやはり疲れていた。というより、顔面蒼白で明らかに体調が悪そうである。
「フィー、こんな夜更けにどうしたんだ?」
「それはこちらの台詞です。どこか具合でも悪いのですか?」
心配して側に駆け寄ると、シドリウスは力なく笑った。
「大丈夫だ。悪夢に魘されていただけだ」
「それは、お辛かったでしょう」
シドリウスは隣に座るよう手でベンチをトントンと叩く。促されたフィリーネは隣に腰を下ろした。
シドリウスはさりげなくフィリーネが風に当たらないように壁になってくれる。夜の外は空気がひんやりとしていて、風が吹くと肌寒いのだ。
「悪夢は毎日見ている。百年も見続けているからもう慣れた」
「ひゃ、百年もですか!?」
竜人からすれば百年は大した年月ではないのかもしれない。だが、フィリーネにしてみれば途方もない。驚かずにはいられなかった。
(毎日悪夢を見ているだなんて……しっかり眠らないと身体の疲れも取れないでしょうに)