破断直後のEt cetera
「お、お兄ちゃん?!」
「Hi未怜! お兄ちゃんのご帰還だよ〜。寂しかったかな?」
相変わらずのマッシュヘアが、30歳には見えない若さを作り上げている。
お調子者の兄、文哉が、私に手を振り首を傾ける。
通り過ぎていく女性2人組が見惚れているかのように、じっとお兄ちゃんを見つめていた。
「ちょっと、なんでこんなとこにいるの?! 帰ってくるの週末じゃなかった?」
「飛行機が取れなくてね。急遽早めたら、空港からの帰り道で偶然未怜を見かけてね。」
「いや何してくれてるの! いちいち降りてこないでよ!」
詩太さんとの大事な時間を邪魔してくれるとは、さすがお兄ちゃんだ。
この人は昔から私に過干渉する癖があり、私の友達や知り合いのことはなるべく把握しておきたいらしい。
詩太さんが、お兄ちゃんに向かって会釈をする。
「お久しぶりですね文哉さん。といっても、前に会ったのはもう随分と昔の話ですが。」
「そうだねえ。君とボクが会ったのはもう12年も前になるかなあ。といっても、君はろくに挨拶もせず、受験勉強があるからとさっさと帰ってしまったけれどね。」
私もそのことが引っかかってはいたけれど、お兄ちゃんは執拗に、私以上に根に持っていた。
あの時、お兄ちゃんも受験生だったのだ。
お兄ちゃんは、私の婚約者を一目見ようと、大事な模試をさぼってまで、顔合わせの場に参加していた。
それなのに詩太さんは、ろくに挨拶もせず帰ってしまったのだ。
お兄ちゃんに近付いた詩太さんが、今度は深々と頭を下げた。
「あの時は、本当に申し訳なかったです。」
「うん。今さら?って感じだけど。」
「でもこれからは、未怜のことを何よりも大切にしていきたいと思っています。どうか未怜さんとの正式なお付き合いを認めては貰えないでしょうか?」
頭を上げた詩太さんが、お兄ちゃんを真っ直ぐに見据える。
いつもは偉そうな態度の詩太さんが、お兄ちゃんを前にやたら腰が低くなっている。
きっと詩太さんなりに、私とのお付き合いが本気であることを証明したいのだろう。
それくらい真剣な表情で、お兄ちゃんに淀みなく伝えた。