破断直後のEt cetera
13.君の頭の中のおよそ8割は
午後のオンラインミーティングがようやく終わり、凝り固まった首を回す。関節が鳴り、ヘッドセットを頭から外す。
これから研究会に参加することになっているため、休んでいる暇はないと、重い腰を上げた。
今日は午後に、他の会議室やミーティングルームでも会議が執り行われていたらしい。
人だかりのできる3階のエレベーターホールで、見覚えのあるグローバル部の男性社員2人組が、未怜の話をしている。
「最近大路さん、綺麗になったよなあ。ちょっと色っぽくなったっていうかさ。」
「やっぱ楢崎課長とデキてんのかな。」
「あれ? 秘書課の高坂さんとはどうなったの?」
「高坂さん? ああ、何でも課長に相手にされなくて、今は若手に入れ込んでるって話。」
「へえ? 俺も大路さんに入れ込まれてえな。」
そんな会話が聞こえてきて、わざと咳払いをして自分の存在を知らしめる。
2人組の一人が俺に気が付いて、慌てて肘で隣の社員をつついていた。
言わせておけばいいものを、居ても立ってもいられず牽制を図ってしまう。
今この十二村製薬での俺は、未怜の元婚約者であり、一方的に婚約解消をした冷徹な御曹司だと思われている。
それどころか事実、俺は未怜にねぎらう言葉一つかけたことがなかった。
彼女がこの会社に就職した時ですら、挨拶もしなかったくらいだ。
昨夜のお兄さんの言葉は何一つ間違っていない。
俺はいつも自分のことばかりで、未怜をないがしろにしてきたのだ。
牽制なんてする資格もないというのに、やはり誰かにとられるのだけは嫌だと自分勝手な思考が働く。
最低な人間だ。