破断直後のEt cetera
「未怜ちゃんがあなたをどれだけ想っているか、分かってもらえましたかね?」
未怜のあの言葉が、今初めて鮮明になる。
『私の好きな人が、優秀な人だからですよ。その人に追いつきたくて、自分も必死に頑張っていただけです。』
俺を好きになったから、そこまで未怜が成長したということなのか。
実感が沸かずとも、鼓動が打ち震えているのが分かる。
未怜がグローバル部に異動したのは、彼女が優秀だからではなく、俺のためにしてきた努力の賜物だっということか。
ふいに目頭が熱くなる。
それなのに俺は声すらかけず、グローバル部への辞令が出た時だって引き留めようとした。
「それだけ未怜ちゃんに好きになってもらえて、あなたは世界一の幸せものですよ。どうか自信を持って下さい。」
小松さんが俺の前にアサリの酒蒸しを置いてくれた。
鮮やかな色のネギが乗った、芳香な香りを放つ温かな料理。思わず笑みが溢れる。
何もしてやれなかった俺が未怜にしてやれること。
そんなの、もう考えるまでもないことだ。
「いただきます。」
「どうぞ。ふふふ。」
『きっか』と小松さんが教えてくれたことを胸に、俺は静かにアサリの酒蒸しに箸をつけた。