破断直後のEt cetera
14.君さえいればどうでもよくて
夜、部屋で詩太さんからのメッセージを見つめていた。
『俺には俺にしかできないことをしたい。少しだけ時間がほしい。不甲斐ない俺でごめん。』
ついこの前までの幸せな時間は一体なんだったのか。
電話しようにも、また突き放されそうで、電話が出来ない。
『ただ声が聞きたい』と言ってかけたとしても、すぐに切られてしまうのが恐ろしかった。
これも全部、お兄ちゃんが掻き乱したせいだ。
私は兄に無視を決め込んでいた。
2人で一緒にディナーでも食べに行こうと誘われても、会社まで送っていってあげるよと言われても、まるでそこには存在しないかのように、返事を返さないでいる。
昔からお調子者のお兄ちゃんは、コミュニケーション能力が優れていることもあり、いつも器用に生きてきた。
オージスの跡取りとして、両親から色々なことを強要されて大変だったと思う。
でも理解力が優れているのか、どんな分野でもすぐに吸収して、あっという間に身につけてしまうのだ。
語学だって、授業の合間に動画を見ているうちに、自然と話せるようになっていたらしい。
羨ましいと思う。
私は何年も努力しないと身にならないタイプだ。
しかも色々な勉強法を取り入れて、試行錯誤して初めて取りかかることが出来る。とにかく時間がかかるのだ。
器用だからこそ、お父さんもお母さんもお兄ちゃんばかりに必死だったのだろう。
お兄ちゃんにはお兄ちゃんの居場所があるように、私には私の居場所があるのだ。
勝手に私の人生を決められるなんて、あんまりだ。
「未怜、お兄ちゃんだよ! いい加減出てきてよぉ。お兄ちゃん寂しくて死んじゃうよぉ〜〜。」
部屋のドアを叩く音が激しく聞こえる。
かれこれ30分は経つだろうか。ずっと私の部屋の前にいる。
これだけ無視しているのだから、いい加減あきらめてほしい。
「未怜ーちゃーん。お兄ちゃんと一緒にお風呂入ろっか!」
がっくりとベッドでうなだれた。
30歳にもなって、よくもまああれだけ私に構えるもんだ。
今日は、『Wo`tis』のライブ配信があるというのに。シウ君を見れば、余計に詩太さんに会いたくなってしまう気がして見れなかった。