破断直後のEt cetera
数日後。
私はオージス創立70周年の記念パーティーに来ていた。
オージスのパーティーに出席するのは、およそ10年ぶり。
着慣れない着物に身をつつみ、こっそりと扉を開けて中の様子を伺う。
いつにも増して派手なスーツを着たお兄ちゃんが、アメリカのビジネスマンに囲まれている。
兄は来期からオージスでの経営を学ぶため、つい先日、アメリカの大手医薬品メーカーを辞職したばかりだ。
今回オージスが業務提携を結ぶMG社の人間なのだろう。
中には俳優並の女性もいる。スリットの入った美しいドレス姿に、とてもじゃないけれど出ていける勇気はなかった。
これならまだリクルートスーツで来た方がマシだ。スタッフと間違えられた方が、パーティーで身を潜めやすい。
「未怜、何してるの? 着付けが終わったのなら早く会場に入りなさいよ〜。」
浅葱色の訪問着を着るお母さんが、遠慮なしに扉を開こうとする。
お母さんの着物が羨ましいと思った。
だってシックな訪問着だし。企業パーティーにはちょうどいい礼服にみえる。
「ちょっと! 私こんな派手な振袖で出席するなんて聞いてないんだけど。」
「しょうがないでしょう。文哉が未怜には赤い牡丹柄がいいっていうんだから。」
「そんなことまでお兄ちゃんの意見に従わなくたっていいでしょ?」
「でも今日の主役は文哉なんだから。ちゃんとお兄ちゃんを立ててあげなくちゃ。」
お母さんの言葉に、唇を尖らせる。
着るものさえ私の意見は通してもらえないらしい。
やっぱり大路家では、生まれた時から大路文哉が主役だと決まっているのだ。
(大人にまでなって、なんか悔しいな。)
会場に入れば、お母さんはすぐに挨拶回りに行ってしまい、十二村製薬で働く私はどうしていいか分からず。
でも私を見つけたお兄ちゃんが、大きく手を振りやって来る。