破断直後のEt cetera

「未怜! かわいい! 信じられないくらいかわいいよ未怜!」


 勝手にスマホで写真を撮ろうとする兄に、一言文句を言ってやろうとスマホを取り上げる。


「なんでこんなに派手な格好にしたの?! これじゃあただの悪目立ちでしょ?」

「なんで? 目立った方がよくない?」

「全然よくないよ! 私、十二村製薬の人間なのに!」


 私が『十二村製薬』の名前を口にすれば、お兄ちゃんが人差し指を立てて私に詰め寄る。


「シーっ。未怜、空気を読みなさい。未怜にはもうオージスで働いてもらうことになっているんだから。」 

「は、ちょっ! 私、その話に賛成してないんだけど!」

「十二村君に婚約破棄されただけでも親族中の噂になっているってのに。未怜が今でも十二村製薬で働いているなんて知られたら、オージスが十二村製薬より弱い立場だと思われる。」

「弱い立場? それが何だっていうの? それ私に関係ある!?」

「大有りだね。少なくともボクの妹である以上は。」

 
 信じられない言葉に、頭に血が上る。

 そんなのまるで、私がお兄ちゃんの人形だとでも言われているようなものだ。
 
 両拳に力が入り、お兄ちゃんを罵倒しそうになった。

 
「Oh!It's a Kimono!」
「How beautiful!」


 アメリカのビジネスマンが、私たちの元にやって来る。

 これだけ派手な着物なのだ。周りが私に注目しているのが分かる。

 恥ずかしくなり、意気消沈した私は、冷たい飲み物を貰いに行くことにした。

 今はお兄ちゃんに関わりたくない。

 私は私でずっと頑張ってきたのだ。

 お兄ちゃんのためでも、オージスのためでもない。それどころか自分のためでさえもないのだ。

 オージスの評判のために、今さらオージスに連れ戻されるなんて悔しすぎる。

 冷たいウーロン茶を両手に、熱を冷ます。

 オージスの社員と、その得意先の社員らが歓談を楽しむ声が、そこらじゅうから聞こえる。

 チラチラと私を見るなり、ヒソヒソ話をしている人たちもいた。

 自分が、とても小さな存在に思えた。

 オージスの令嬢だというのに、私は期待されずに育てられた。

 それなりの有名私立中学に入学して、そのままエスカレーター形式で大学に入学して。

 私はオージスの経営について、何一つ教えられていないというのに。

 この先も、好きな人のために生きる道を選んで、何がいけないというのだろう。





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