破断直後のEt cetera
「失礼します。大路未怜様でよろしかったでしょうか?」
「はい?」
顔を上げれば、黒い燕尾服を着たスタッフの人が立っている。
そして隣を見れば、なぜかそこには――――
「十二村様がお見えになっております。大路様をお探しでしたので、こちらにご案内させていただきました。」
スタッフさんが一礼をして、私たちから離れていく。
その場に私と詩太さんが取り残された。
「え……? 嘘でしょ? 詩太さん?」
「未怜、」
隣の席に腰を下ろす詩太さんが、私の手首を握る。
「なんでっ?」
「まずいな。」
「そりゃまずいでしょ! 招待されてないんだから!」
「未怜が綺麗すぎて、注目の的になっている。最悪だ。」
冗談を言う詩太さんが、私の手からウーロン茶のグラスを取り、一気に飲み干した。
「どうして? なんでここに来たの?」
いつも通り、冷静ではあるものの、着ているスーツは会社で見るよりお洒落なものを着ている。
真っ黒なシャツにネクタイ、ストライプのダークグレーのスーツは、ライトの反射でところどころ光っている。
きっとブランドものの、相当高いスーツだ。
私の顔を見て、優しく微笑む詩太さんが、私の頬を指の甲でそっと撫でる。
久々の体温に、胸の奥がぎゅうっとしめつけられて涙が出そうになった。
大好きな人がここにいる。
「十二村君? なんでこんなとこにいるの?」
詩太さんに気が付いたお兄ちゃんが、私たちの元にゆっくりと近づいてくる。
詩太さんが立ち上がり、お兄ちゃんに向かって頭を下げた。
「この度は、オージス70周年記念おめでとうございます。」
「君、部外者だよねえ? 部外者に頭を下げられる覚えはないんだけど。」
他の社員たちも見ている中、詩太さんからジャケットの内側ポケットから招待状を出す。
それをお兄ちゃんに見せた。