破断直後のEt cetera
「俺に資格がないのであれば、チャンスを下さい。俺は、十二村製薬の経営者を辞退する覚悟で今日ここに来ました。」
詩太さんの発言に、お兄ちゃんが一歩足を下げて面食らう。
私は心臓が止まったかのように、呆然としたままだった。
「ま、まさか……。そんな。そんなことが許されるとは、思えない!」
「それでも、俺のレールに沿った道のりより、未怜の自発的な努力の方が遥かに尊い。俺は未怜のためなら、御社の社員として従事しようと覚悟を決めました。」
「と、十二村君が、オージスに? そんなこと、ご両親が許すはずがないだろう!」
「俺は一人っ子ですが、俺の父は5人兄妹の長男です。十二村製薬を継ぐ親族はいくらでもいます。」
「だからといって!」
「もちろん、両親には我儘を言って説得し、了承を得ました。長い話し合いにはなりましたが、最終的には俺の意思を優先すると言ってもらいました。俺は未怜のためならば、すでに大路家の養子になる覚悟だって出来ています。」
十二村製薬の御曹司が、経営者を放棄してオージスに?
そんな現実味のない話し、本当に許されるとでも思っているのだろうか?
さすがに黙って聞いていられなかった。
「待って。今まで詩太さんについてきた十二村製薬の社員たちはどうなるの? 彼らの期待を裏切ってもいいの?」
私が問い詰めれば、詩太さんは真剣な表情で首を横に振った。
「裏切るわけじゃない。きちんと役員と社員一人ひとりに説明したいと思っている。そして俺のこれまでの経営方針を覆すような、新たな方針を見出していってほしいと。」
そう言い切ってから、再びお兄ちゃんに眼光を向けた詩太さん。
お兄ちゃんは本気で驚いているようだけど、実際そんな簡単な話しじゃないと思う。
ご両親や十二村製薬従業員の賛同だけで放棄できるとは思えない。
どうしてこう詩太さんて、どこまでも真っ直ぐで不器用なのだろう。
愛おしすぎて、なんだか笑えてきてしまう。