破断直後のEt cetera
15.過保護な恋人のEt setora



 年度末の決算期が過ぎたと思えば、あっという間に翌年度が訪れた。

 4月の忙しさは3月の忙しさと変わらず、今度は総会に向けての申請書作成に追われている。

 それでも私は、“詩太さんの彼女”という意識から、美容や服装にはなるべく気を使っている。

 高坂さんがあれだけ綺麗にしていたのは、きっと、十二村製薬の後継者である営業本部長の秘書として、ふさわしい存在であろうとしていたからではないだろうか。

 そんな風に高坂さんに対する見方も変わり、私も意識することを心がけた。



 総務部からのメーリングを見て驚いたことがある。

 なんと、秋から営業本部の秘書課は、営業事務部に吸収されることが発表されたのだ。

 営業本部に秘書課を不要だとの見解を示した詩太さんが、昨年度より起案していたらしい。  

 高坂さんは営業事務部の課長になることが打診されている。


 そして我がグローバル部の赤堀部長も、秋より海外支部への異動が打診されていた。

 元より海外支部で働くことを希望していた赤堀部長。彼なら、どこへ行っても信頼される上司になるだろうと、秘書の檜佐さんは言っていた。





「秘書課は吸収されるってのに、高坂以外はのんびりしていて大丈夫なのかと心配になる。」


 白桃ジュースのグラスに唇をつける詩太さんが、わずかな息を吐き、不安そうな顔で言った。 

 今私達は、玄也さんの居酒屋で飲んでいる。

 楢崎課長と吉香も一緒だ。


「高坂さんがしっかりしてるから大丈夫でしょ。それより十二村、自分の心配した方がいいんじゃない?」

「俺の何が心配なんだ?」


 楢崎課長に向け、詩太さんが顔をしかめた。

 今日は連休前で、久々の居酒屋だ。


「ねえ、その秘書の高坂さんって誰? 十二村さんのなんなの? まさか前にラブホ街に入っていった女?」

 
 今日も詩太さんに厳しい吉香が、無表情のまま釘を差す。

 止めに入ろうかとも思ったけれど、私はここのところ残業続きで疲れているため、吉香の好きなように喋らせている。







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