破断直後のEt cetera
「『きっか』は未怜のお兄さんよりもずっとやりづらいな。」
「今は高坂さんのこと聞いてるんですけどー。」
「高坂は普通にシゴデキ人間だよ。俺も他の社員も皆信頼してる。」
「ラブホ街は?」
「行ってない。そもそも高坂みたいな肉食を相手にすると、男は皆逃亡したくなる。」
「じゃあ誰とラブホ街にいったの?」
「志水さんか? あの人は教授のツテで今度結婚するらしい。ハーフだから距離感が誰とでも近いんだよ。」
「ふうん。」
自分から聞いておいて、興味のない素振りでゲソの唐揚げを食べ進める吉香。
そんな吉香を見て、詩太さんが反撃に出る。
「それなら、なんで『きっか』と未怜は繁華街で抱き合ってたんだ? 彼氏持ちとか言っておきながら、本当は未怜に相当執着してるんじゃないのか?」
ついトックリから注ぐ日本酒を溢しそうになった。
そういえば、詩太さんがてっきり志水さんとデキていると思った私が、大泣きして吉香が慰めてくれたことを思い出す。
それにしたって、それで私と吉香がデキているだなんて、普通思わないだろう。
勝手に百合扱いされてたまったもんじゃない。
「当たり前でしょう! 私、未怜とかれこれ14年の付き合いですよ? 大好きだし愛してるに決まってるじゃないですか!」
「悪いが俺の方がずっと未怜を愛している。」
「言っとくけど全然ノロケに聞こえませんからね?」
「はあ、ピーピーピーピーうるせえなあ。てめぇはとっとと彼氏のとこ帰りやがれ。」
「あー! 魔王が本性あらわしたー!!」
酔い始めた吉香が騒ぐなか、楢崎課長が笑いながら5杯目のビールジョッキをあおる。
「魔王かあ。ってことは僕は、魔王の参謀になるかもしれないってことか〜。」
魔王にも参謀にも縁のない私は、意味が分からず、斜め向かいに座る課長に目を向けた。
「はい? どういう意味ですか?」
「十二村ね、今グローバル部の部長候補になってるの。」
「ええ! そうなの?!」
「嫌だよねー。やりづらいったらありゃしないよねえ。」
何も知らなかった私は、呆然と詩太さんの顔を見つめる。
詩太さんがグローバル部の部長になれば、また私は詩太さんの秘書になるということだ。