破断直後のEt cetera
パソコンを開いて今日のスケジュールを確認する。
十二村部長は、朝から取引先との会議によりすでに外出していて、夕方に帰ってくる予定になっていた。
(帰り際、十二村部長に婚約を解消したいことをちゃんと伝えてみよう。)
これが仕事以外で、初めての会話になるかもしれない。そう思うとなんだか緊張してしまう。
でもこのまま私が何も話さず、婚約を解消するのは不自然すぎる。直属の上司なのだから失礼にあたるかもしれない。
「大路さん、今日私、来月予定してる部長会議の資料作成するから、課長に頼まれてる提案書の作成お願いできる?」
「はい。わかりました。」
高坂さんに言われて、メーリングにて受信した“提案書作成に基づく事項”を確認していく。
周りに『心ここにあらず』がバレないよう、画面に集中する顔を貼り付ける。内心、ソワソワしながらも、十二村部長が帰ってくるのを待った。
夕方、提案書を一通り書き上げたところで、軽く伸びをする。
すると十二村部長が慌ただしく入って来た。
「高坂。」
「おかえりなさい部長。」
「昨日頼んでおいた学会の申請受理メールを見たが間違いだらけだったぞ。どういうことだ?」
「えっ……」
高坂さんが、慌てて申請用画面にログインし、営業本部の出張申請を上から確認していく。
(それって、私が申請したやつじゃ、)
私も同じように申請用画面に入り、昨日申請したばかりの出張申請を開く。
でも高坂さんに渡されたメモ通り、間違いなく申請が受理されている。
「仕事は1ミリも間違いなく、完璧にこなせといつもいっているはずだ。」
「す、すみません! 急いで申請し直しを!」
十二村部長が高坂さんのパソコン画面を後ろから覗く。
すると十二村部長が、視線を外すことなくつぶやいた。
「担当者が“大路”になっているな。おい、大路が申請したのか?」
左隣にいる私を一瞥したきり、またすぐに高坂さんの画面に視線を戻した十二村部長。
私は心臓を掴まれたような思いに駆られながらも、必死に声を絞り出す。