破断直後のEt cetera
どうしよう。押し倒されている状況なのに、かっこいいと思ってしまう自分の浅はかな邪心を呪いたい。
でも確かに部長の言う通りだ。悪いのは私だ。マフラーを忘れたのも、泥酔して倒れたのも全部、私の罪。
「わ、分かりました。いいですよ? 身体でちゃんとお礼しますよ!」
「身体? 本気で言ってるのか?」
「だってそうでもしなきゃ部長の気が晴れないんでしょう?」
「大路はこういうことに慣れているのか?」
「試してみます?」
「…………」
元婚約者相手に何を口走っているのだろう。
でも悔しかったのだ。いつだって好きになった私の方が詩太さんに振り回されて、私ばかりが辛い気持ちを味わってきたのだから。
部長の瞳が私を捉えて離さない。部長の瞳が私の瞳を追いかけてくるのに、まるで私が追いかけている気分にもなる。
「後悔、するなよ?」
「ん、」
半開きの唇が私の唇を襲う。
生易しいキスはそこにはなかった。
生まれて初めて味わうキスだというのに。私の初体験は、始めから極めて濃厚だった。
アルコールの香りがふわりと鼻をついて、すぐに彼の匂いに包まれる。
透き通るような瑞々しさと、深みのある大人が混ざり合う匂い。頬と頬が触れる素肌の感触。それよりも一層温感を持つ唇の湿り気が、私の脳を痺れさせる。
苦しともがけば、すぐに息継ぎの呼吸をさせようと唇を離し、そしてまたすぐに喉を圧迫するほどのキスで塞がれる。
爪先にぎゅっと力を込めれば、部長の足が私の脚の間に入ってくる。
全身が、頭の中身まで堕落させられていく感覚。好きな人相手だと、どんな行為でも受け入れてしまうこの身は、もうとっくに部長に預けてしまっていた。
「ぶ、部長、」
「今は部長じゃない。」
「じゃあ、……詩太さん?」
「いい子だ。」
頭を撫でられて、再びキスを落とされる。
私の長すぎない髪に指を滑らせて、そのまま耳たぶを指で撫でられる。
くすぐったい。くすぐったくて、なんて甘いのだろう。
お願いだから私を甘やかさないで。今まで通りの詩太さんでいて。そうじゃなきゃ、私――――
「未怜」
間近で囁く詩太さんの声に瞳の奥が滲む。
嬉し涙なんかで私を絆さないで。お願いだから、これ以上好きにさせないで。
「ま、待って、くださ、」
「試しているのはお前の方だろう? 待ってほしいのか?」
「あっ、詩太さん、」
彼の腕にしっかりとしがみつく。
こんな風に触れられる時間が惜しくなり、私からも腕を伸ばしてキスを求めた。
「詩太さん、ん。舌が、熱い、」
「糞。こんな淫らな女だったのか。」
荒々しいキスでかぶりつかれて、彼の大きな手に侵食されていく。
自分のトップスを捲くられて、素肌が詩太さんの指先の温度に溶かされていった。
婚約解消したばかりの相手に、私は初めてを捧げてしまったのだ。