破断直後のEt cetera
5.心機一転先はエレベーターに乗って
「それで? 『初めてのキス』を捧げただけで最後まではやっていないと。」
「そうです! 左様でございます!」
「期待して損した。詩太さんが相当な賢者だってことはよおく分かったわ。」
吉香が面白くなさそうに、フォークに刺したチーズフロマージュケーキを大きく頬張る。
日曜日。詩太さんとの一夜をどう受け流していいか分からず、私は吉香を誘ってカフェで話を聞いてもらっていた。
金曜日の夜、そのままラブホで押し倒されて、甘いキスをされて、身体もあちこち触られた。
でも何を思ったのか、詩太さんの手が突然止まり、深いタメ息と共に私を見下ろした。
『手が震えている。怖いのか?』
『ま、まさか! 怖くなんかないですよ!』
『声も震えているな。お前、この状況でもしかして“初めて”とか言わないよな?』
――なんで、なんでそんなことが分かるのか。
すでに“悔しい”感情を持つほどの余裕もなかった私は、目をパチパチと瞬かせて彼から視線を反らした。
『ええと……』
『嘘だろ。』
『う、ウフフフフ?』
『はぁ〜〜〜〜。めんどくせえ。』
その言葉に、グサリと太い矢が心臓に突き刺さる。泣くほどの情緒はとっくに通り越していた。