破断直後のEt cetera
ベッドから下りた部長が、勝手に洗面所に入っていき、唐突にシャワーを浴び出す。
どうしていいか分からない私は、彼のシャワー中に、テーブルにお金だけ置いてラブホテルを後にした。
私は詩太さんにとって、どうやら『めんどくせえ女』らしい。そんなの私だっておんなじだ。私にとって詩太さんほど『めんどくせえ男』はいない。
結局あの夜は一体何だったのか。甘く溶かされるほどのキスはずっと私の脳を支配している。
最後に、私に一生消せない思い出を植え付けるだけ植え付けて、このまま婚約解消だなんて、十二村部長の性悪説がいい感じに加算されていく。
本当に、あのまま最後まで抱かれなくてよかった。
自ら彼に向かって手を伸ばしてしまったことは人生最大の汚点だけれど、“甘い思い出”よりも、“最悪な思い出”として片付けた方が後腐れ無く終われる。
これ以上好きにならないに越したことはない。
「処女はめんどさいんだってさ。」
「はあ。それを未怜の前で言うとか、詩太さんて意外にも嫌な奴だったってことね。」
「うん。なんか傷つく暇もなく帰ってきたよ。」
「よかったじゃん! そんな奴と結婚しなくて。」
2人で顔を見合わせて笑い合う。本当にその通りだ。吉香に話を聞いてもらえてよかった。
金曜日は出勤するのが気まずいだなんて思っていたけれど、今はすでにさっさと出勤して、さっさと退職手続きをしたいと思っている。
大路未怜は株式会社オージスのように、心機一転、新たな一歩を踏み出すのだ。
その時私は自分の身に起こることなんて何も知らずに、十二村製薬を退職する気満々でいた。