破断直後のEt cetera
「あ、あの。すみません、実はそのことについてなんですが、」
この際だからはっきりと言うべきだろうか? それとも濁すべき? 言葉を選んでいれば、十二村部長が私の思考を遮る。
「赤堀部長、俺達はすでに婚約を解消しました。オージスも医薬品事業に参入するようですし、もう十二村とオージスの縁を俺達子どもの結婚で縛る必要もありません。」
「え? そうなの……?」
「はい。ですので、もう俺と大路は婚約関係にないんですよ。赤の他人です。」
きっぱりと、何の弁明をできないほどの言葉を並べられて、周りが唖然としているのが分かる。
『赤の他人』。元々私と詩太さんは赤の他人だ。でも婚約者として紹介された日、少なくとも私の中では詩太さんは他人ではなくなったと思っていた。
一切の詰まりのない言葉が私の胸に突き刺さる。私は一体、詩太さんに何度とどめを刺されればいいのだろう?
奥歯を噛み締めた。こんな大勢の前で、きっぱりと婚約解消を断言されるなんて。
ふと、高坂さんが驚いた声で私に聞いた。
「そうなの?」
明らかに目が爛々と輝いている。グローバル部の異動がなくなった絶望から一転、もうすでに新たな餌に食いついている。
「はい。先週、十二村部長からそのようにお話がありました。私も納得した上でのことです。」
「ほ、本当なのね……。」
どこか安堵したように、高坂さんがにこやかに十二村部長を見ている。
赤堀部長は、さすがというべきか、意表をついた返しにも慣れているらしい。
驚いた顔から、すぐに優しい笑顔に切り替わった。
「……そうか。まあ、お互い自由に結婚相手が見つけられるんならその方がいいしね。」
「ええ。」
「それなら尚の事、何の後ろめたさもなく大路さんには働いてもらえるってもんだ!」
フロアに笑いが響き、他の社員たちは再びそれぞれの仕事に手をつけ始める。赤堀部長の明るさに救われる。この人に見初められてよかった。
私も笑顔で返し、新天地に引き抜いていただいたお礼を伝えた。
十二村部長と高坂さんが先を行く中、私は楢崎課長から簡単な業務について教えてもらうことになった。
楢崎課長が引き止めてくれてよかった。この状況で、どう十二村部長と高坂さんと同じ空間に戻れというのだろう?