破断直後のEt cetera

「グローバル部の仕事はどうだ?」

「突発的な仕事が多いみたいですね。今日は朝から論文の翻訳作業に追われていました。」

「突発的にしては随分とプレッシャーのかかる作業だな。」


 リフレッシュスペースの一番奥の座席に座った。ここは背もたれが高いから、個室のように囲われているような作りになっている。

 今このスペースには、私たちを含めて5名。皆それぞれノートパソコンとにらめっこをしながらドリンクを飲んでいる。

 きっと私たちが元婚約者同士とは気付いていないだろう。


「グローバル部の秘書2人は、フットワークも軽い上に頭も切れる。経験豊富な分な。」

「私なんかがやっていけますかね?」

「無理ならさっさと異動願いでも出せばいい。」

「ですよね〜。」


 さすがにこの件に関して、反論する気にはなれない。

 まだ初日とはいえ今までとは全く違う分野の仕事に、やる気が消沈しかけたのは事実なのだ。

 これまでは部長を支える事務的な仕事が多かったから、製品の知識に触れることが少なかった。

 でもグローバル部は違う。一つの医薬品に関して、深い知識を求められるのだ。十二村製薬の一端を担う部署であることを、身を持って痛感した。


「どうした? 威勢がねえな。」

「当たり前ですよ。だって今までに聞いたこともない専門用語が飛び交ってるんですよ?」

「まあ、大路なら大丈夫だろう。語学だって勉強したんだろうからな。その努力の賜物がグローバル部への異動に結びついたんだし。」

「珍しいですね……。部長が私を褒めるなんて。」

「まさか韓国語までマスターしていたなんて思ってもなかった。赤堀部長に聞いて驚いたよ。」


 多言語を学んだのには、ちゃんとした下心があるのだ。仕方ない。

 英語と韓国語を勉強したのは、どちらも『十二村部長のせいですよ』と心の中でつぶやいて、甘い香りのコーヒーに手をつける。




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