破断直後のEt cetera
部長も同じタイミングで、チョコキャラメルコーヒーに唇をつける。でも熱かったのか、すぐにカップから唇を離して『ふうふう』と息で冷ましている。猫舌なのだろうか?
やたら長い脚は、日本のソファでは高さが足りないのか、偉そうに組んでいる。それなのに熱いコーヒーがなかなか飲めないらしい。
ちぐはぐな異様さに、お腹の中で笑いをこらえる。
すると、自分のズボンのポケットに入っているスマホが振動する。取り出すと、海外で働く兄からのメッセージだった。
私が十二村部長との婚約を解消したこと、そして十二村製薬のグローバル部に配属されたことをお母さんからにでも聞いたのか。全く気遣いのない、応援メッセージが入っていた。
『妹よドンマイ☆ 人生結婚が全てじゃないさ! でもグローバル部で安定思考は禁物だよ? ま、がんばりたまへ♡ 未怜のカッコいい兄より』
相変わらず、兄、文哉の頭のおかしさは変わらないらしい。この人がオージスの未来を担うのかと思うとゾッとする。
苦笑の顔が漏れていたのか、部長に怪訝そうに見つめられた。慌ててスマホのメッセージ画面を消す。
「……どうした? やけに嬉しそうだな。」
「え、ええ?! そうかなあ?」
「なんだよ? 誰からの連絡だ?」
「いやいや、そんなんじゃ、」
「嘘つけ。やたらと画面を見つめていただろう。」
そこまでしつこく聞かれるとは思わなかった。どう誤魔化そうかと考えていると、スマホのトップ画面が目につく。
慌てて部長にスマホ画面を見せた。
「これですよこれ! 『Wo`tis』のイベント情報が配信されたんです!」
「『Wo`tis』?」
「韓国アイドルですよ! 『Wo`tis』のバレンタインイベントが今度あってですね、」
「この画面の男が、お前の“推し”なのか?」
「そ、そうです。シウ君っていって、マイペースな爽やかキャラなんですよ〜!」
私のスマホ画面を食い入るように見つめる部長。眉間にシワを寄せている。
ライブ中のシウ君の爽やかスマイル画像と、さすがに自分が似ているとは思わないだろう。
でもあんまりにも画面を見ているため、もしかして気付かれたかもと思い、スマホを慌ててポケットにしまう。
部長が、ソファの背もたれにもたれながら言った。