破断直後のEt cetera
お父さんの会社であるオージスは、昔は傾きかけていた。でもそれからオージスは日々成長し続けて、私が大学生になる頃には、大企業の一つとして名を連ねていた。
そんなある日、私は一人の男子生徒から告白された。全く接点のない、違う学部の男子生徒。私は婚約者がいるからとその告白を断った。
後日、食堂で斜め前に座っていたその男子生徒が、友達と騒ぎながら喋っているのを聞いてしまった。
『違うって! あんな地味な女でもオージスの令嬢らしいじゃん! だから付き合っとけば内定貰えるかもって思っただけだって!』
『お前最低じゃん〜!』
その時、自分が初めて周りとは違う人間に思えた。
私はすでに大きくなっていたし、何より吉香がいたから『令嬢』だと言われて捻くれることはなかったけれど、部長はきっと小さい頃から御曹司として扱われてきたのだろう。
高校生の頃、詩太さんにチョコを渡そうと自宅を訪れた時、詩太さんがが自宅に招き入れていた友達も詩太さんと一線を引いていたのだろうか?
そう思うと、少しだけ胸が痛くなった。
「大路。それなら『きっか』にはやるのか?」
「はい? 吉香?」
私の背後に立つ部長は、まだ私に用があるらしい。
そうまでしてバレンタインチョコの『忖度』を私に認めさせたいのか。そんな執着心は求めていない。
「『きっか』って奴と仲いいだろ。昔っから。」
「仲いいですよ? 昔っから。」
「なら『きっか』にもチョコあげるのか?」
「うん? あげる、と思いますね。」
「『きっか』にやるのも、『忖度』意外の感情で渡すってことか?」
「……え? なんで吉香が出てきたの?」
振り向いて、眉をひそめる部長を見つめ返す。
でも部長はなぜだか真顔のまま。
まさか、“友チョコ”まで否定するつもりなのだろうか? 意図するものがよく分からない。
「もしかして、ですけど。部長も欲しいんですか? 『忖度』じゃないチョコ。」
私が何気なく聞いたことに、部長が軽く咳払いで応える。すると声に出さずに、『うんうん』と顔を縦に動かした。
あまりの素直さに、自分の口が自然と開く。
もしかして、これまでバレンタインは疎外感を感じてきたから、今になって寂しさを感じている?
「んーと。わ、わかりました! じゃあ私、伝えておきますね?」
「……待て。何をだ?」
「つまり、部長もお友達から『忖度』じゃないチョコが欲しいってことですよね?」
「は?」
「だから楢崎課長に、十二村部長がチョコ欲しがってるって伝えておきます! 任せてください!」
拳で自分の胸を叩き、目を見開いてやる気に満ち溢れる私。
詩太さんが寂しい思いをしているなら、私が手助けするしかない。それくらいのこと、元婚約者がしても恨まれはしないだろう。