破断直後のEt cetera
釜山からの来訪者とのミーティング中、課長に陶然しかけた脳を、仕事脳に奮い立たせるのに必死だった。
きっと吉香なら、『楢崎課長の家に行ってさっさと告白されてこい』と言うに違いない。
玄也さんのお店で飲んだ日の夜、吉香からは、〈断然十二村さんより楢崎さんのがいい〉というメッセージが入っていた。
約2時間のミーティングが終わり、夕方からは議事録の作成に追われた。
会社間での、しかも海外企業とのミーティングはこれが初めてだ。これまでは社内での会議に関するアジェンダや議事録を作成してきた。
しかも今回は業務提携のため、業務の分担を明確化するミーティングだった。社内のみではとどまらない議事録と、ビジネス用語を使う韓国語に頭を悩ませた。
「大路さん、お疲れ様。どう? 翻訳ソフトは役立ってる?」
「天王寺さん! ありがとうございます!」
朝から部長と出かけていた秘書の天王寺さんが、帰ってくるなり私にペットボトルの無糖紅茶を差し入れてくれた。
お礼を伝えて、天王寺さんに分からない用語を教えてもらう。
「大路さん、ここに来て早々残業続きだけど、身体大丈夫そう?」
天王寺さんの優しい声色に癒されて、心の奥にポっと陽が灯る。
つい甘えたくなって、愚痴を吐いてしまった。
「グローバル部の仕事は、例え忙しくても楽しいです。だから身体も元気、なんですけど……。」
「けど?」
「私、この会社に来た時から、ずっと孤独を感じていて。十二村部長の婚約者だったし、今じゃ十二村部長の元婚約者ですし。周りに敬遠されてるっていうか。」
天王寺さんが少し面食らったように姿勢を正す。まさか仕事以外の悩みを打ち明けられるとは思わなかったのだろう。
それでも天王寺さんは柔らかく笑ってくれる。