破断直後のEt cetera
さっきいた女性は、顔は全く見えなかったものの、背丈は志水さんでも高坂さんでもない。2人とも私より背が高いのだ。
また違う女性と関係を持っているとでもいうのだろうか?
(違う、これは想定内だよ未怜……。そんなこと最初から分かってたことでしょ?)
もしかして、本当は本命がいたのかもしれない。
こんな会社の近くで腕を組んで歩いているのだ。
社内の人間に見つかるリスクは部長なら考えていたはずだ。見つかってもいいから堂々と腕を組んでいたのではないだろうか。
冷静になんてなれるはずもない。
あの人を見る度に私の涙腺と心はぐちゃぐちゃで、いつか私の心は燃え尽きてなくなってしまうんじゃないのか。
いっそ早く燃え尽きてこの世からいなくなれれば楽になれるのに――――。
感情的になりすぎて、悲観的な思考が最上級に達する。
しばらく走った先の角を曲がり、小さな公園の前でしゃがんでうずくまる。
泣きたい気持ちを押し殺し、マフラーで極限まで顔を隠した。何度も溢れ出そうな涙を呑み込む。
馬鹿馬鹿しいほど悲劇めいた自分の姿が、今どれだけ憫然たるものか。
そうまでして私は、私は――
「大路さん? 大丈夫?」
柔らかな声に、しゃがんだまま振り返る。
するとそこには、モカ色のスタンドカラーコートを羽織り、ダークブルーのスーツに身を包む楢崎課長が立っていた。
中腰になり、私に指の長い手を差し伸べる。
「お嬢さん。どうせ泣くなら、僕の胸で泣いてみない?」
楢崎課長に支えられながら、膝がよろめくように立ち上がる。
立ち上がると同時に、課長の胸に抱き寄せられた。
呑み込んだはずの涙の瓶が、容量オーバーといわんばかりに栓が抜け落ちる。