破断直後のEt cetera
背中に回る課長の手が、『僕がいるよ』と私の頭のてっぺんから爪先までを温めていく。
「僕は君を泣かせはしない。独りにはしない。もし君が泣きそうになれば、何もかも投げ出してすぐに駆けつける。」
鼓動に直接響いてくるような言葉。
本当にこの人は、私のことを想ってくれているのだろう。
全身の肌が栗立つ。とめどなく流れていく涙が、より一層溢れ出す。
課長のコートに縋って、抑えきれない衝動を、えづきながら吐き出した。
「わたし、それでも詩太さんが好きなんです……大好きなんです……!」
コートを掴む自分の手が震えている。
それくらい私は、伝えることに必死だった。
「どれだけ他の人に褒められようと、私はやっぱり詩太さんがいい……。だって、だってわたし、今まで詩太さんのために生きてきたから。」
「……」
「私のこれまでの努力は、あの人のためでしかないんです。十二村製薬のためでも、私自身のためでもない。詩太さんのためだけにしてきたものなんです!」
楢崎課長が褒めてくれた。赤堀部長も、天王寺さんにも私の努力を言葉にして称えてくれた。
でもそれは全部、詩太さんがいたから成し遂げられたもので、詩太さんがいなければ、努力さえしてこなかっただろう。
「すみません課長。課長に認められて、嬉しいです。でも私、やっぱり詩太さんじゃなきゃ、駄目なんです……。」
14才の自分が出会った、十二村詩太という人物は、私にとっての全てだったから――。
私の行動は、いつだって彼を軸に回っていた。彼自身に耽溺してきた。
今さらそれを否定するわけにはいかない。
結果として、全て自分のためになっているのだとしても、発気前の原動力は全て詩太さんなのだ。
私はどうしても、詩太さんを好きな事実からは目を背けられない。
喉がひきつるほどの泣き声に、課長の吐息が優しく笑った。