破断直後のEt cetera
10.高密度の距離感
「十二村、いつからそこにいたの?」
部長を見た楢崎課長が、特に驚いている様子もなく、抑揚のない声で言った。
「楢崎と大路が抱き合っていた時から。」
「それで、十二村はここに何の用なの?」
「それより大路、なんで泣いているんだ?」
楢崎課長の質問を無視して、部長が私に投げかけた。
どこから見られていたのか。ここに部長が現れるとは思わず、私は咄嗟に求められた応えに考えあぐねる。
「十二村、なんでさっさと僕らに声かけなかったの?」
再び課長が問うも、部長は無視して私の元に近づいてくる。
「大路、楢崎のことが、好きなのか?」
「い、いや……」
「ならどうして楢崎と抱き合っていた?」
私の首に、大きなマフラーを掛けながら問い詰めてくる。
でも怒気をはらんだ声じゃない。どこか寂しそうな声と、辛そうな表情が滲み出ている。
そんな顔で問われれば、まるで私と課長が抱き合っていたことにショックを受けているみたいだ。
(なんで、部長の方が傷ついているみたいに……)
悔しくて、唇を噛みしめる。
泣き顔を痛いくらいに曝け出した私は、羞恥といった感情をとっくに通り越していた。
「それなら部長は、なんでさっき女性と腕を組んで歩いていたんです?」
「は?」
「部長だって、志水さんでも高坂さんでもない女性と腕を組んで、川沿いを歩いていたじゃないですか。」
「……それが、なんだ? 悪いか?」
「ええ悪くないですよ? だったら私だって楢崎課長と抱き合ってたっていいはずです。十二村部長には関係のないことでしょう!」
「おい、瞼が赤すぎるだろ。」
話を逸らすかのよう、部長が私の瞼を指でなぞる。