破断直後のEt cetera

「お前、『きっか』が好きなんじゃないのか。」

「……はい?」

「お前の方がよっぽど俺を煽っているだろう。昔っから、『きっか』といちゃついてるとこばっか俺に見せつけやがって。」

「ん? んんん?」


 斜め上から振ってきた言葉に、自分の顔が自然と傾いていく。

 そういえば、リフレッシュスペースでも突然部長から『吉香』の名前が出てきて不思議に思った。

(あれ? もしかして詩太さん、何かとんでもない勘違いをしている?)


「えっと、吉香とは確かにめちゃめちゃ仲いいですよ?」

「自慢か?」

「でもそれは親友としてという意味で、決して『いちゃつく』ような仲では、」

「お前は親友と手を繋ぐのか?」

「……ああ。私女子校育ちだったので、ノリで繋ぐこともありますよ? 深く考えたことないけど。」

「はあ? なら俺が大学生の時、俺の実家の近くで『きっか』と2人でウロウロしてたのはなんでだ? バレンタインに2人でデートしてたんじゃないのか?」


 まじまじと真剣な顔で迫られて、思わずよろけて助手席に座り込んでしまう。

 そこまで吉香とのエピソードを問い詰められるとは思わなかった。

(部長、本気で私と吉香が付き合ってるとでも思ってたの?!)

 呆気に取られながらも、当時のことを暴露しなければ、部長にずっと誤解されたままになってしまう。

 あの時のことを話さなければならないなんて。羞恥の心が呼び戻されてしまう。

「私、その、詩太さ……部長に、どうしてもバレンタインのチョコを渡したかったから。それで、実家まで渡しに行こうと思って。」

「……嘘だろ。」

「ほんとですよ! でも部長、友達と一緒だったから勇気がなくて。嘘だと思うなら吉香に聞けば分かります。」

 
 部長が、腰が抜けたようにへなへなと私の前にしゃがみ込む。顔を手で覆い、「なんだそれ。」と落胆するような声を出している。

(もしかして、ずっとずっと私が吉香と付き合っていたと思ってる??) 

 そんなわけがない。吉香には今や素敵な同期の彼氏がいるのだから。





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