破断直後のEt cetera
「……いつだったか、繁華街を『きっか』と手ぇ繋いで帰っていた時あっただろう。」
「もしかして、部長が志水さんとラブホ街に入っていった時ですか?」
「あの時は教授や他のメンバーも一緒に飲んだ日だったんだよ。たまたま帰りが志水さんと一緒だっただけで、」
「それで酔って、勢いで志水さんとラブホに?」
「行くわけないだろ。教授秘書とラブホに入ったなんて知られてみろ。一発で教授に契約切られんぞ。」
「た、確かに。」
「でも大路が勘違いしてくれたお陰で、上手く煽れたらしいな?」
「あの、この間から『煽る煽る』って! 婚約解消しておいて意味が分からないんですけど!」
私がずっと気になっているのはそこだ。
私を煽って、私にキスするくらいなら婚約なんて解消しなくていいはずだ。
それは、どう考えても部長が結婚自体を望んでいないからじゃ――
「明日お前、俺のうちに来い。」
「えっ、はい?!」
「このままじゃ埒が明かない。」
通り沿いには、楢崎課長がニヤニヤとこちらを見て手を振っているのが見えた。
十二村部長が面倒くさそうな顔で、『あっちに行け』とジェスチャーで返している。
スマホのデジタル時計はすでに21時を指している。
「今日はもう遅い。送っていく。」
「あ、ありがとうございます。」
「明日また昼くらいに迎えに行く。」
「え、ええと、」
「嫌か?」
「嫌というわけじゃ……」
嫌なわけがない。
でも本当に部長の家に行ってもいいのだろうか? 緊張して上手く部長と視線が合わせられない。
「あの私、男性の家に行くの初めてで。お土産って何がいいですか?」
「手ぶらで行くのが男の家だろ。」
「そうなんですか?」
「ほら冷えてきた。家の人が心配する。」
助手席に脚をしまえば、ゆっくりと部長がドアを閉めてくれた。