破断直後のEt cetera
珍しい紺色の、本革張りのシートで埋め尽くされた車内は、一見洗練された高級感が漂っている。
でも後部座席には、クリーニング店から引き取ってきたのか、ビニールに入ったままのスーツが数着、重ねられていた。
しかも、せっかく備え付けられている本革のティッシュカバーにはティッシュが入れられていない。剥き出しのティッシュ箱が一箱、座席の下に転がっている。
靴も何足か後部座席の下に転がっているし、今にも溢れ出そうな用紙が束になったファイルが、運転席と私のいる助手席の間に差し込まれていた。
そういえば部長席は、書類が落ちそうなほど積まれていることもあったし、ボールペンがよく失くなり、何度か同じものを発注した。
高坂さんがしょっちゅう整理整頓をしていたから、そこまで散らかっているようには思えなかったけれど。
「……部長、よくこの散らかっている状況で私を送ろうと思いましたよね?」
「お前、俺には何でも遠慮なく口にするよな?」
「部長に言われたくないんですけど。」
「別に片付けが苦手なわけじゃない。ただ片付けている暇がないだけだ。」
子供みたいな言い訳をされて眉間にシワが寄るも、なぜだか肩の力が抜ける。
外から見れば、国内でもトップクラスの高級車だ。中も汚さないよう、気を使わなければならないかと思っていた。
それに、ここまで散らかっているなら、他の女性を同乗させているとはとても思えない。妙に安心してしまう。
遮光の窓から見える景色は、いつもの見慣れた景色が広がっている。
部長は当たり前のように私の家を知っているようで、ナビにすら頼らなかった。
私はこの人に見放されていたわけじゃなかったのだろうか。