破断直後のEt cetera
次の日、部長は本当に13時きっかりに迎えに来た。
どんな格好でお邪魔すればいいのか分からず、変に気合いを入れていると思われるのも恥ずかしいため、いつものパンツスタイルにしてみた。
長めのニットに、くすみピンクのプリーツパンツ。
言われた通り、ザッハトルテの材料を持って、事前にアプリコットジャムだけ作っておいた。
今日の朝、小松さんにジャムを作っている現場を見られてしまい、事情を話す羽目になってしまったけれど。
小松さんは、ずっと昔から、私が詩太さんに想いを寄せていることに気付いていたらしい。
毎年バレンタインには、作ったチョコを綺麗にラッピングして持って出かける割に、そのまま家に持って帰ってくることが多かったから、「好きな人がいるのではないか」と勘付いていたらしい。
しかもその相手が、十二村部長だということも薄々気付いていたらしい。そっと教えてくれた。
ハンドルを片手で握る今日の部長は私服姿だ。シャツの上にニットを重ね着して、ベージュ色のパンツを履いている。
前髪は下りていて、初めて見る爽やかな格好に、目尻が下がりそうになる。かっこよすぎる余り、部長の顔がまともに見れない。
昨日の帰り際の、ふざけたコインチョコの会話からギャップを感じてしまった。
私が静かすぎたのか、部長が咳払いをして口火を切る。
「言っとくけど、部屋はちゃんと掃除したし片付けたからな?」
「そ、そうですか。今日はお世話になります。」
「うん。」
再び静かになった車内。なぜだか昨日よりもずっと気まずい。
もしかして、部長も緊張しているのだろうか? そう思って運転席をチラ見する。
私の視線に気付いた部長が一瞬私を見て、すぐに顔を反らした。
確かに今日は後部座席も片付けられている。