破断直後のEt cetera
「あ、あの。部長!」
私もエレベーターから降りて、部長の背中を追いかける。彼の袖を遠慮がちに掴んだ。
「あの、私は……! 楢崎課長よりも、十二村部長のが、かっこいい、と思います。」
数秒の時差で、全身から火が出そうなほど熱くなる。
俯いたまま、そっと袖を掴んだ手を離した。
「そ、そうか。」
部長の消え入りそうな声が、廊下の囲われた空間に、微かに反響する。
部長の顔が赤い気がした。
部長の部屋は3階の一番奥。角部屋になっている。
玄関に入れば、部長特有のさっぱりとしたハーブの香りが広がった。
まさか婚約解消後に部長の家に来るなんて、思いもしなかった。
リビングはダークブルーの壁に、ダークブラウンの家具で統一されている。
観葉植物や額縁といったものは一つもないけれど、部長らしさが滲み出ていた。
どこに座っていいか分からず、ただ立ちつくしてしまう。
「好きなとこに座れ。今ココアを淹れる。」
「は、はい! ありがとうございます。」
ソファにゆっくりと腰を下ろせば、ソファテーブルの下にはビジネス雑誌が何冊か積まれている。
雑誌の見出しが気になり、手にする。
『㈱オージス 「攻め」の一手で「好転」の兆し』
該当ページには、お父さんのインタビュー記事が掲載されている。
普段、ビジネス雑誌を読むことから遠ざかっていたため、今初めてオージスが新規参入を決断した理由を目にした。
『ジェネリックは先発医薬品よりも品目数が多く、製造コストやキャパシティの問題から、供給不安に直面するのが常と言えるでしょう。
しかしながら今回、私の息子である文哉のお陰で、米大手企業MG Co., Ltd.との提携を機にジェネリック医薬品を扱う運びとなりました。輸送もMG社の自社便を利用するためコストもかからず――――これは全て当初よりオージスを成長へ導くために息子が計画していたものであり――――』