破断直後のEt cetera
出勤早々、忙しない高坂さんに肩を叩かれた。
「大路さん、来月の十二村部長の学会の出張申請しといてくれる? 私、急遽グローバル部の部長に同行しないといけなくなったの。ちょっと出てくるから!」
来月参加予定の学会について、日時や場所が書かれたメモを高坂さんに渡された。
最後に肩をぽんぽんと叩かれて、いつもの高坂さんとは違う空気を感じる。
(機嫌が良さそうにみえるのは気のせい?)
すると目の前のデスクからヒソヒソ話をする声が聞こえてきた。
「高坂さん、昨日グローバル部の部長から、今日の外資系とのミーティングに同行してほしいってお誘いがあったらしいわよ。」
「そういえばグローバル部の秘書さん、確か先月で退職したって言ってたもんねえ。」
「もしかして高坂さん、引き抜かれることを期待してる?」
「それならさっさと引き抜かれて、ここからいなくなってもらいよね〜、なんて。」
2人の秘書からそんな噂話が聞こえてきた。
グローバル部といえば、十二村製薬の花形ともいえる部署だ。名前の通り、世界各支点を統括する役割を担っている。
十二村部長が背負って立つこの営業本部も花形といえば花形だが、国内にとどまるため、世界を相手にするグローバル部より感覚的に下にみられることは多い。
それにグローバル部は海外主張も多いため、秘書も同行する、つまり、出張費で海外旅行ができるという特典がついてくるのだ。
高坂さんの機嫌が良いのは、グローバル部の部長から引き抜かれる可能性があるからなのか。
高坂さんからもらったメモ用紙を見ながら、総務部管理システムにログインし、十二村部長の出張申請を行う。
(あれ? 学会はいつも2泊なのに。)
メモ用紙には“1泊2日”と書いてある。
十二村部長は今日も朝から取引先に行っていていないし、他の秘書もこの件に関しては知らないらしい。
でもまさか高坂さんが間違えるとは思えず、メモ通り、1泊で申請をした。