破断直後のEt cetera
11.ザッハトルテよりも甘いひと時を


 ニットの下から焦らすように入ってきた詩太さんの手が、私の背中をまさぐる。

 下着と素肌の隙間を見つけて手が這わされていく。

 詩太さんに抱きついていた自分の腕が、反射的に強くなる。


「ま、待って。わたし、本当に初めてで」

「初めてじゃなきゃ困る。」

「でも詩太さん、ホテルで処女は『めんどくせえ』って。」


 前にラブホテルで同じように押し倒された時は、詩太さんが『めんどくせえ』と言ってベッドから下りていった。

 私の中でそのことがずっと引っかかっているのだ。同じようなことでまた呆れられるのは嫌だ。


 胸に触れそうなところで、詩太さんが私の顔を見下ろす。

 私の頬に張り付いた髪を、ふわりと横に流した。


「そんなこと言ってねえよ」

「言った! いいましたぁ」

「あのなあ。言っておくが俺も経験がある方じゃない。それに、俺は力加減が出来ない時があるんだよ。」

「力加減? 物理的な意味で?」

「うん。俺は未怜のように綺麗な人間じゃない。はっきり言って、喧嘩沙汰なんてのも何度か経験した。」  

「う、嘘。詩太さんが、喧嘩?」

「俺は、十二村家の御曹司というだけで散々喧嘩を吹っかけられてきた。しかも違う学校の生徒にまでな。」


 私に跨ったまま、重ね着のニットとシャツを脱いでいく詩太さん。

 広い背中だとは思っていたけれど、スマートな体型に似つかわしくない、上半身の筋肉美が顕になる。

 程よくえぐれた筋肉の溝。胸筋から綺麗に描かれた逆三角形に、感嘆の溜息が漏れる。

 胸筋に対し、腰が細いからスマートに見えるのだろう。甘党の癖して、こんな美の暴力を隠し持っていたとは。


「どうした? なんで顔を隠す?」

「隠すでしょ。そんなんいい身体見せつけられたら鼻血出そう!」

「はあ? でもお前の好きな韓国アイドルみたいに細くないだろ。」
 
「詩太さんの胸筋と腹筋は反則ですって。そんなの、女なら誰だって惚れちゃう。」


 詩太さんが無反応だから、両手で覆い隠した指の隙間から目だけで覗く。

 すると恥ずかしそうに、頬を指で掻いていた。

 そういうギャップが私を悶え死なせるのだと、この人は分かっているのだろうか?





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