破断直後のEt cetera

「……おい、なにニヤけてんだ」
「って、うわあっ」 


 詩太さんに腕を引かれて、マットレスに顔を埋められる。

 破顔しっぱなしだった顔をどうにか修正し、怒った顔で詩太さんに詰め寄る。

 
「ちょっと、起きてるならさっさと起きて下さいよ〜。もう11時ですよ?」 
  
「もう11時? あっという間に今日が終わりそうだな。」  


 もぞもぞと、布団を高く持ち上げる詩太さんが、私を招き入れようとする。

 こんなの、まるで漫画の世界の出来事だ。

 昨日の今日で、私が詩太さんの恋人づらしても許されるのだろうか?

  
「なんだよ。来るならさっさと来い」

「い、いいんですか? 私が部長の寝込み襲っても。」

「お前から来ないなら、俺が襲う」


 まだ寝ぼけ眼の詩太さんが、発声し始めたばかりの、ゆったりとしたハスキーボイスで俺様を気取る。

 そのギャップが、やっぱり私の“ギャン萌”の域をかっさらう。


「部長、メロすぎですって! こんな姿見せられたら、誰だってイチコロですよ!」

「はあ?」

「お願いだから誰にも見せないで下さいよ? 特に志水さんとか高坂さんとか!」

 
 しびれを切らすように、詩太さんが私の身体を布団の中にしまい込む。

 そして私を抱きしめて、大きく深呼吸をした。


「チョコの匂いがする」

「さっきザッハトルテを作ったから、」

「もう作ったのか? 俺も一緒に作りたかった……」

「そんな気サラサラない癖に。」

 
 詩太さんの肌の香りに包まれながら、心音が次第にトクトクとうるさくなっていく。 
 
 布団の中だから余計に耳に響いてしょうがない。

 詩太さんが私の髪を撫でていく。

 肩よりも少し長い髪を滑らせて、そのまま背中に指を這わされる。


「まだ、ブラしてないのか」

「さっき洗ったばっかなんで。まだ乾いてませんもん。」

「お前の肌、気持ちいいな」


 トップスの下から背中を撫でられて、冷たい外気が背骨を上からなぞっていく。

 昨日のことがまだ夢の中だというのに、もう上書きされるとでもいうのだろうか。 




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