破断直後のEt cetera

「部長、あの……は、恥ずかしいです、そこ。」

「2人の時は、名前で呼べ」


 執拗に触れられて、目眩を覚えるほど頭が朦朧とする。

 彼の腕を掴んで抵抗しても、すぐにズボンに手が入れられてしまう。

(男の人って、こんなにえっちなんだ)

 分かっていながら受け入れてしまうのだから、女も同等なのかもしれない。


「いっとっけど、俺はお前しか見えてない。お前さえいれば、なにもいらないよ」

「だめ、ダメですそれっ」

「ダメなわけねえって」


 耳を舐められて、私が喘ぐ度に「かわいい」と囁かれた。

 自分で自分を『かわいい』だなんて一度も思ったことがないのに、詩太さんに言われると、かわいくなろうと思いたくなる。

 好きで好きでたまらない。嬉し涙が出るくらい、詩太さんの身体に溺れた。





 シャワーを浴び終えた詩太さんが、ダイニングテーブルを見て「おお」と声を上げた。


「朝飯? 昼飯?」

「朝ごはんですよ。昨日の朝買ってきたパンと、即席でスープを作りました。」

「美味そうだな。でも先にザッハトルテから食っていい?」

「いいですよ。」

「今日はバレンタインだもんな。」

「今日はバレンタインですもんね。」

 
 席に着くなり、詩太さんが口を開けて、私に『食べさせろ』と言ってくる。

 12年越しに渡せる、初めてのバレンタインチョコ。
 
 感慨深さを噛みしめつつ、丸いザッハトルテをフォークで掬えば、とろけるチョコとアプリコットジャムの層が綺麗に乗る。

 落ちないよう片手を受け皿にして、詩太さんのあどけない口に運ぶ。


「なんだこれ。買ったのか?」

「違いますよ、ちゃんと作りました。」

「凄いな。いや本当に、見た目も綺麗だが、味もそれ以上に美味い。」

 
 私からフォークを奪った詩太さんが、ザッハトルテを大きく掬って頬張る。

 ガツガツと食べるものではないけれど、今はこれくらい一生懸命食べてくれた方が、私の努力が全て報われるってもんだ。




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