破断直後のEt cetera
「こんなに甘いもの好きなら、もっと早くに渡せばよかったな。」
何気なくつぶやけば、詩太さんがフォークを置いて私を見る。
「俺も、もっと早くに連絡先くらい聞いておくべきだった。」
「ほんとですよ! 私、せっかく高校生の時詩太さんちまで行ったのに! とても渡せる雰囲気じゃなかったから、」
「もしかしてその時俺、誰かと一緒にいたか?」
「はい。お友達3人くらいと、ガレージで、詩太さんのモテエピソードを話してるのを聞いちゃったから!」
「モテエピソード?」
詩太さんに身に覚えがないようでも、私はしっかりと覚えている。
『詩太さぁ、東高の連中相手にしてたってほんとぉ? あんたの黒歴史が噂んなってんだけど。』
『どうたったか。』
『お前ヤバくない? どんな高校生活送ってたんだよ。』
『来るもの拒まず、去るもの追わず。』
『なんだよそれ。モテモテか。』
「吉香だって一緒に聞いてるんですから!」
私があの時の会話を伝えれば、詩太さんが眉間にシワを寄せて考え始める。
数秒して、思い出したように「ああ、」と声にした。
「あれは、……あれは、高校の時に他校に喧嘩売られて。それで返り討ちにしたっていう黒歴史で……」
「か、返り討ち? 詩太さん、本当に不良みたいなことしてたんですか?」
「だから、昨日そう言っただろう!」
「やだ。こういう御曹司、実在したんだ。」
「はあ?」
「いえ別に〜。」
まさか、他校の不良に『モテモテ』だったとは。
そんなこと、どう転んだって想像できるわけない。
今までのモヤモヤした感情が、一気に払拭されていく。
それもこれも、詩太さんと沢山話せた結果だ。
「未怜、」
詩太さんに両手を取られる。
じっと私を見上げて、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「俺と付き合ってほしい。結婚を前提に。」
真っ直ぐに私を見据える、切れ長の瞳。紫がかっているかのようにも見えるその瞳が、私の瞳の奥に問いかける。
こんな風に言われることを、ずっと夢見てきた。
まるでおとぎ話に出てくる王子様であるかのように。
「さっさと返事しろ。俺は気が短い。」
たまに眉をひそめる表情は、昔不良だったという彼を彷彿とさせるけれど、不良みたいな王子様がいたっていいと思うのだ。
喉を詰まらせながら、必死に頷いた。
辛い感情だけじゃなく、嬉しい感情でも泣かせにくるのは決まって詩太さんだ。
私も詩太さんの手を握り返した。
「はい。よろしくお願いします。」