悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
プロローグ
 ロベリアを一目見た瞬間に理解した。
 この国を揺るがす人間になるだろう、と。
 

「それで、二人きりでどんな話をするつもり?」

 人払いをすませた部屋の中、はしゃぐようにロベリアが言う。
 室内には高価な置物があちこちに飾られている。
 それらに負けぬほど豪奢なドレスを身に纏う女は、確かに美しい。

 警戒心を隠さず睨むが、彼女は真っ向から視線を受け止め笑うばかり。
 一国の宰相を前にして、庶民の娘がこうも萎縮することなくいられるだろうか。
 陛下の寵愛を受け傲慢になっているにしても、あまりに落ち着き払った態度だ。

「陛下を手玉にとったつもりだろうが、好きにはさせん」

 公務をおろそかにするほどに入れあげ、国宝を貢ぐ愚かな王。
 その美貌で意のままに操り、贅の限りを尽くそうというだけなら可愛いものだ。
 けれどロベリアには、それだけで終わらない何かを感じていた。

「あたしが何をしたいかなんて、知らないくせに」

 下賜された美しいドレスに身を包み、あちこちに散りばめられた宝石よりも輝く瞳でロベリアが勝気に微笑む。
 美しい女だとは思う。その美しさで全て思い通りにしてきたのだろう。
 だがあいにく、私は陛下ほど簡単ではない。

「その企みを暴くために、ここまで来たのだ」

 眉一つ動かさずに低く言う。
 今までの手が通用しないと知り、鼻白むだろうという予測は裏切られ。
 彼女はいっそう艶やかに、嬉しそうに笑った。

「わざわざご苦労なことね。暇なの?」
「ふざけるな。陛下の尻拭いで休む間もない」
「あはは! ご愁傷さま」

 苛立ちのままに言うと、ロベリアが子供のように無邪気な笑い声をあげた。

「……いいわ、かわいそうな宰相様に教えてあげる」

 ひとしきり笑ったあとで、彼女は真面目な調子でこう切り出した。

「あたしはね、この後宮をめちゃくちゃにするために来たのよ」

 冗談にしか聞こえない。
 適当なことを言って煙に巻く気か。
 眉間にシワをよせ、目の前の女を睨みつける。

 真意の読めない大きな目が、こちらを量るようにじっと見ていた。
 
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