悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
第一章 傾国の悪女

▽アイリス・ガーランド

 「それではアイリス様、こちらの寝所にて陛下をお待ちくださいませ」
 「ありがとう。下がっていいわ」

 ここまで案内してくれた女官がうやうやしく頭を下げ、ドアを閉める。
 静寂が落ちるのと同時に、胸の奥から大きな吐息がこぼれた。

 部屋の中央には、五人は並んで寝られそうな天蓋付きのベッド。
 その周りを囲むのは豪奢な調度ばかりで、ここが王の寝所であることを嫌というほどに伝えてくる。

 ああ、本当に今から陛下がくるのだ。
 意識した瞬間、めまいのような感覚を覚えて視界が揺れる。
 後宮入りして半年。教育期間を終え、今夜がとうとう『お披露目の夜』だ。

 ベッドにぎこちなく腰掛けると、心臓が早鐘のように鳴りだした。
 緊張と怯えで身体が硬直する。手にはじっとりと汗をかき、寒いわけでもないのに小刻みに震えていた。
 ジリジリと進んでいく時計の針をじっと見つめたまま、陛下の訪れを待ち続けた。

 けれど、いつまで経っても私が入ってきたドアは開かなかった。

 「何かあったのかしら……」

 さすがに心配になって呟く。
 この部屋に案内されてからもう三時間が経過していた。
 緊張し続けてさすがに疲弊してきた頃。

 ふいにドアが開いて、身体が跳ねた。
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