悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「それで、怪我の具合はどうだ」
 「ふむ……刺傷というよりは裂傷ですな。出血の割に傷は浅いので、この程度なら縫合は不要でしょう」

 目が覚めてきたのだろう、移管は分かりやすく説明をし、テキパキと処置を始めた。
 それを聞いてようやく肩の力が抜ける。

 「お休みのところ申し訳ありませんでした」
 「なんのなんの。これが私の仕事ですからな」

  痛いだろうに気丈に振る舞うアイリスに、医官は闊達な笑い声を上げた。

 「さて、もうこちらを見ても大丈夫ですぞ殿下」
 「ああ」

 言われて振り向くと、アイリスが照れたような微笑みを浮かべて「お気遣いありがとうございます」とはにかんだ。

 怖かっただろうとか。朝までついていてやりたいとか。
 今すぐ休ませてやりたい気持ちをグッと堪えて、アイリスの正面の椅子に座る。

 「疲れているところすまないが、何があったか聞かせて欲しい」
 「はい。どこからお話ししましょうか」

 アイリスは泣き言ひとつ言わず、キリリと表情を引き締め背筋を伸ばした。
 自分の証言が、二人の明暗を分けてしまうことをよく理解しているのだろう。

 「まず、君があの場所にいた理由から」

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