悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 僕の質問にアイリスは順を追って淡々と話した。
 後宮内の違和感、守衛室への報告、尋常ではない様子のイレーヌを見かけたこと。
 それから自室ではない方向へ向かうのを見て、咄嗟に追いかけたこと。

 「その傷はロベリアが?」
 「いえ、これはその、イレーヌ様に……」

 言いづらそうに口籠る。相手は公爵令嬢だ。
 下手なことを言えばアイリスが罰されかねない。それを恐れているのだろう。
 だがそんなことはさせない。

 「公平に判断すると約束するよ」
 「あ、いえそうではなく」

 僕の言葉に、アイリスが慌てて首を振る。

 「最初、イレーヌ様はロベリアさんに襲い掛かろうとしていました。それを止めようとしたので、怒らせてしまったようです」
 「つまり狙いはロベリアだけだったというわけだな」

 イレーヌは前々から気に食わない女官に対しての嫌がらせがひどかった。
 何度諫めても直接手を下していないから証拠はなく、言いがかりは困りますと躱されてしまう。
 陛下が最終的には正妃にするのだろうという暗黙の了解的なものもあって、強く出ることもできず苦く思っていた。

 だが今や陛下はすっかりロベリアに夢中で、彼女の天下も落ち目を迎えた。
 イレーヌは荒れ、自滅のような形で孤立し、追い詰められていたようだ。
 自棄になってロベリアとそれ以前に警戒していたアイリスとの相打ちを目論んだという可能性も考えていたが、その線はなさそうだ。
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