悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 イレーヌのお咎めはなし。
 不幸な事故として、なんの責任も追及されなかった。

 考えうる限り最低最悪の処遇だ。
 いらなくなったのならせめてガーランド領に帰らせてくれればいいのに。
 後宮でのことを広められると厄介だという悪知恵が働いたのだろう。

 大部屋に移された姉は、後宮の片隅で人の目から隠れるように生きていたらしい。
 それでも姉は、不幸な身の上を嘆くことなく、イレーヌへの恨み言さえもなかったという。
 真面目に仕事をこなし、他の下級女官にも優しく接した。
 姉と同じ部屋で過ごしたという女官が、涙ながらにそう教えてくれた。

 むしろ国王とロエルから解放されてからの方が、姉は伸び伸び過ごせたのではないだろうか。
 大火傷を負ったという姉に胸を痛めながらも、姉の心情を想像して少し心が軽くなる。

 もともと自分の容姿が人目を引くことを理解した上で、目立たず穏やかに生きてきた姉だ。
 誰よりも聡いのに、鈍く愚かなフリで、他人からの嫉妬心を受け流してきた。
 きっと後宮にきてから、下級女官でいるときが一番姉らしく過ごせた時期だったはず。

 事実、しばらくの間、姉は平穏に暮らしていたようだ。
 万が一にも火傷痕が国王の目に入らぬよう常に黒いベールを被り、薄い手袋をつけ、全身を隠す服に身を包みながら、姉はよく働いた。

 その健気で前向きな姿に、第二王子のエミリオが惹かれたことが最後の引き金となった。

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