悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 バルメロ侯爵に声をかけられたのは、働き始めて半月も経たないうちだ。

 王都に来てからずっと、彼との邂逅を待ち望んでいた。
 姉の教育期間が終わるまであと一ヶ月。
 それまでになんとか後宮に入り込みたかったから、ギリギリだった。
 間に合ったのだと分かった瞬間、涙が出るほどホッとした。

 侯爵は給仕中の私を全身舐めまわすように見た後、愛人にならないかと提案してきた。
 不躾な申し出だったけれど、貴族の庶民に対する態度なんてこの半月で嫌というほど体感したし、同じような誘いは初日からうんざりするほどあった。

 同僚女性たちのやっかみの声も嫌がらせもだ。
 姉はずっとこの鬱陶しさの中で生きてきたのだと思うと、目立たないよう地味にしていた理由が身をもって理解できた。

 侯爵の誘いには「もっと上を目指したいの」と強気で断った。
 彼は心底惜しむような顔をしたあとで、「ではもっといい話を紹介しよう」と切り出した。

 彼は王宮に太いパイプを持っていて、これまで国王に取り入るため何人も貴族令嬢を後宮に紹介しているのだと前回の調査で知っていた。
 絶対に断れないような、立場の弱い没落寸前の貴族家から、美しい令嬢を探し出すのだ。
 自分が後ろ盾になってやると言えば、皆喜んで娘を差し出すのだという。

 反吐が出るような話だ。
 だが今の私にとって、このロクデナシの存在がこの上なく重要だった。

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