悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 女官同士の揉め事も面倒がらずに対応していた。
 部屋の配置を変えたり、間に入って両者から話を聞いて仲裁したり。
 能力や適性だけ見れば、ロエル殿下よりよほど国王に向いている。

 だが私はエミリオ殿下も嫌いだった。

 彼に対する印象は卑屈な臆病者。
 父と兄の言いなりで、愛する女一人守れやしない役立たず。

 一度目の世界で、姉と恋仲になっておきながら、見殺し同然に幽閉処分に甘んじたことが許せなかった。
 複雑な事情があったのだとしても、命を懸けて守ってほしかった。

 だけど姉が愛した人間なら。
 私には理解できない良さがあるのかもしれない。

 少なくとも、見た目だけではない姉の美しさを見出したという点だけは評価できる。

 彼に姉を任せてもいいのか。葛藤しながらも、何度も試すようなことをした。
 国の現状を憂う気持ちがあるのか。
 庶民の肩書を持つ私を見下していないか。
 王族の権力を振りかざして、理不尽に誰かを傷つけていないか。

 それらすべてを彼はクリアして、なおかつ有能さをひけらかしたりもしなかった。
 いや、むしろ卑屈すぎるくらい自分に自信がなく、それゆえに陛下とロエル殿下に逆らえなかったのだろうというのが想像できた。

 だから私は全力で悪女として振る舞った。
 彼に危機感を持たせ、王族としての自覚を促し、陛下とロエル殿下を諌める気概を持つように。
 そしてあえて姉の居る場所に向かわせ、積極的に関わりを持たせることで二人の仲を進展させた。
 一度目よりも深く愛し合えば、今度こそ姉を守るだろうと信じて。

 エミリオ殿下は面白いくらいに私の望むように変わっていった。
 全く思い通りになってくれない父と兄とは大違いだ。
 それが自分本位な人間と他人を思いやれる人間との違いなのだろう。

 みるみる頼もしくなっていくエミリオ殿下を、嫌う気持ちはいつの間にかなくなっていた。
 やはり姉が恋するだけのことはある。

 姉との仲も順調なようだ。

 そう確信して、私は当初の予定を諦めて新しい目標を立てることにしたのだった。
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