悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 事情が飲み込めないまま、エミリオ殿下が彼女を守るように私の前に立ちはだかる。
 その表情は凛々しくて、初めて会った時の情けない男と同じ人とは思えなかった。

 前回の人生では姉を守りきれなかったくせに。
 随分と頼もしくなったものだ。

 エミリオ殿下の変化に、改めて嬉しくなる。

 「殿下、大丈夫ですので」

 アイリスが涙を流しながら微笑んで殿下を止める。
 優しい声だ。懐かしい笑みだ。

 「っ、おねえさまぁ……!」

 たまらなくなって、込み上げる感情のまま姉に駆け寄り抱きつく。

 「お姉様!?」
 「ほらほら殿下、姉妹の再会を邪魔するなんて野暮ですよ」

 愕然と叫ぶ殿下を笑いながらなだめて、ルキウスが彼と部屋を出ていく。
 二人きりにしてくれる優しさを感じながら、お礼を言う余裕もなく私は姉にしがみついて泣きじゃくった。

 「ふふ、たった一年でずいぶん変わってしまったと思ったけど、相変わらず甘えんぼうね」

 涙声のまま笑って、姉が優しく私を抱き返し頭を撫でてくれる。
 その手の感触に、後から後から涙が溢れて、息をするのもやっとだった。

 「ねぇ、聞かせてくれる? あなたがどんな大冒険をしたのか」

 あやすような柔らかい声で姉が囁く。

 私は泣きながら何度も頷いて、涙がおさまるのを待ってから、大好きな姉に全てを打ち明けた。

 「そうだったの……一人でよく頑張ったわね。私のために、本当にありがとう」

 姉は死に戻りも含め何もかもを信じてくれて、これまでのことを心から労わってくれ、何度もお礼を言ってくれた。

 「あとのことはお姉ちゃんに任せてね。今度は私がロベリアを幸せにするから」

 頼もしいその言葉に、これまでの苦労が全て報われた気がして、肩の力が抜けていく。
 せっかく止まっていた涙が再び溢れ、子供のように大声をあげて泣きながら姉に縋りついた。

 姉は私が疲れて眠るまで、ずっと背中を撫でてくれた。
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