悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 ルキウスが言う通りになるなら、もう姉に危険はない。
 イレーヌも、今回はさすがにヴェロニカの時のように女官同士の喧嘩では済まされないだろう。
 私はあくまでも被害者で、一度目の時のように処刑される理由もない。

 「そうか……そうだな……」

 そのことに今気づいたのか、ルキウスが呆けたように呟く。
 それから沈黙し、考えるように視線を床に落とした後で、真っ直ぐに私を見て口を開いた。
 その瞬間。

 「ああっ! お待ちください!」 

 廊下にいた兵士の焦ったような声と同時に、勢いよく扉が開いた。

 兵士の静止を振り切って入ってきたのはアイリスだった。
 訳がわからないまま着いてきたのだろう、彼女の後ろには、困惑した顔のエミリオ殿下が立っている。

 「……やっぱり、あなただったのね」

 彼女はゼーゼーと肩で息をしながら、呆然と私の顔を見て呟いた。

 確信に満ちた声だ。
 後宮入りして以来ずっと避けてきたけど、さすがにバレるだろうと覚悟はしていたから動揺はしなかった。

 「ロベリア……!」

 彼女は噛み締めるように私の名前を呼んで、それからくしゃりと顔を歪めた。
 溢れる涙を気にも止めず、こちらに近づいてくる。

 無意識に立ち上がり、気づくと私も彼女に向かって足を踏み出していた。

< 190 / 206 >

この作品をシェア

pagetop