悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「どうしたらロベリアをあなたより私に夢中にさせることができますか」
 「まぁ」
 「うわ」

 目を丸くする姉と嫌そうに顔を歪めるヴェロニカに、カァッと顔が熱くなる。

 「ちょっとお姉様になんてこと聞いてるのよ!」

 たまらず腰を浮かせ声を荒らげると、ルキウスは悪びれた様子もなく「君が悪い」と言ってフンと鼻を鳴らした。

 「そうですねぇ……特別なにかしなくても、もうなっていると思いますよ」
 「お姉様もなにをおっしゃってるんです!?」
 「あはは!」

 ほとんど悲鳴に近い声で叫ぶ私に、ヴェロニカがケラケラと笑い転げる。

 「~~もう! 何か用があったんじゃないの!?」
 「ああそうだった。アイリス様、殿下がお呼びです。結婚式のことでご相談があると」
 「あらなにかしら」
 「おそらく招待客のことだと思われます」

 白々しく、今思い出したという顔でルキウスが真面目な調子に戻る。
 肩透かしを食らったのが悔しくて、叩こうとした手をひょいと避けられてしまう。

 「きゃっ」
 「おっと」

 空振りでバランスを崩し、転びそうになった身体をルキウスが抱きとめた。

 「あ、ありがとう」

 決まり悪さを誤魔化すように、不貞腐れた言い方になってしまう。
 あまりの子供っぽさに、ルキウスも呆れてしまっただろうか。
 気になってちらりと視線を上げる。

 ルキウスは無言でその視線を受け止めたあと、なぜかチュッと私の額にキスをした。

 「なっ……!」
 「では私はこれで」

 絶句して真っ赤になった私を置いて、ルキウスはさっさと部屋から出ていってしまった。

 「……あれが国王を陥れて国を乗っ取ったと噂の傾国悪女と悪徳宰相とはね」
 「あら、私は救国聖女と清廉宰相の噂の方が好きよ」

 ヴェロニカと姉の呑気な会話ももう、動揺した私の耳には入らなかった。


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