悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「はぁ、なんで僕がこんなことを……」

 断り切れず押し付けられたお使いをこなし、強気に出られない自分の情けなさを感じながらロベリアの部屋に戻る。

 辿り着く直前に、話し声が聞こえて足を止めた。
 渦中のロベリアと、宰相のルキウスだ、

 苛立ったような表情で何事かを言うルキウスに対し、ロベリアはうるさそうに顔を顰めている。
 彼らの言い合う姿は、すでに見慣れたものとなっている。

 彼はロベリアに惚れるでもなく恐れるでもなく、唯一真っ向から立ち向かえる人物だ。
 僕だけでは対処しきれないと見抜いているのだろう。
 彼がいまだにロベリアに懐柔されていないのを目撃するたびに、僕がおかしいわけではないと安心できる。

 それにしても一体何を話しているのだろう。
 幸い、彼らはまだ僕に気づいていない。
 足音を殺し、静かに近づいていく。

 「……ねぇ、だから何度も言っているでしょう? あなたが心配するようなことなんて何もないって」
 「そう言って何度陛下に余計なことを言った」
 「あら、あの人が勝手にしたのよ。あたしのせいじゃ……あらエミリオ」

 ロベリアが負けじと言い返す途中でこちらに気づく。
 まるで友人のような気安さだ。すっかり舐められている。

 「馬鹿者。殿下を呼び捨てにするんじゃない」
 「だってこの人全然王子さまって感じじゃないんだもの」
 「所詮、第二王子だからな」

 律儀に訂正してくれるルキウスに感謝しつつ、つい自虐してしまう。
 ずっと兄上と差をつけられて育ったせいで、すっかり卑屈になってしまった自覚はある。
 同じ王族でも、生まれた順番が違うだけでこうなのだ。
 庶民というだけで理不尽を味わってきただろうロベリアが、国王に見初められて多少傲慢になるのも、仕方のないことなのかもしれない。
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