悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「情けない人ね。自分で自分を貶めるなんて」
 「クセでね。ほら、頼まれてた化粧水」
 「まさかおまえっ、殿下を小間使い扱いしているのか⁉」
 
 化粧水の瓶を渡しながら言うと、ルキウスが驚愕に目を見開いた。

 「もぉー、ルキウスうるさぁい」

 ロベリアはそれを受け取りながら、美しく整えられた眉をひそめる。

 「だって他の子に頼むと肌が爛れる薬とか持ってくるんだもん」
 「それはっ……いやそれにしたって殿下に……」

 唇を尖らせて文句を言うロベリアに、珍しくルキウスが言葉を詰まらせる。
 ロベリアに嫉妬した女官たちがどんな悪意を向けるか、すぐに想像できたのだろう。

 「エミリオがいいって言ってるんだからいいじゃない。ねぇ?」
 「いや、いいとは言ってないが」

 ささやかな抗議にも堪えた様子はなく、ロベリアは「ありがとねぇ」と軽い礼だけ言ってさっさと自室へ引き上げていってしまった。

 「……まったくあの女ときたら」
 「王族相手にも引けを取らない宰相閣下殿も、彼女に振り回されておられるようだ」

 苦笑して言うと、ルキウスがやれやれといった顔で嘆息した。

 「タチの悪い女です。殿下もお気を付けくださいね」

 念を押すように言って去っていく。
 苦労の滲む背に「実はまだ頼まれたおつかいが残っているんだ」とは、とてもではないが言えなかった。

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