明治御曹司の独占愛 〜使用人は溺愛され妻になる〜
水元の家へ連れられて行った日、最初に目にしたのは跡取りの重貴さんだった。

広い玄関に立つその人は、静かな目で私を見下ろし、やわらかく言った。

「安心するといい。ここはもう君の家だよ。」

その一言が、胸の奥に温かく落ちた。

続いて紹介されたのが娘の蘭子だった。

「娘の蘭子よ。」

「初めまして。仲良くしてね。」

陽だまりのように明るい笑顔に、私は慌てて頭を下げた。

「珠樹です。よろしくお願いします。」

私とはまるで違う、白く整った手をした女の子だった。

「ここが私の部屋よ。」

案内された先には、ふかふかの布団が敷かれた綺麗な寝台があった。

雨風もしのげない掘っ立て小屋で眠っていた私には、まるで別世界だった。

思わず息をのむと、蘭子はくすりと笑った。

「ほら、食事よ。」

膳に並ぶ白いご飯と温かな汁物。

私は夢中で箸を動かした。

噛むたびに甘みが広がり、胸がいっぱいになる。

「そんなにお腹が空いていたのね。」

奥方様が私の頬を撫で、哀れむように微笑んだ。

その手は優しかったけれど、私はなぜか少しだけ、胸の奥がちくりとした。
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