追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 ラシリネはダリウスのエスコートを受けて馬車へ乗り込み、隣国の王城へ足を踏み入れた。

「お帰りなさいませ、陛下!」

 彼は皇太子のはずなのに、なぜか忠臣達は当たり前のようにそう呼んで迎え入れている。

(一体、どういうことなのかしら……?)

 ラシリネは不思議そうに小首を傾げ、説明を求める視線をダリウスに送った。

「今は、俺が皇帝だ」
「まぁ……」

 聖女は隔絶された空間で、生涯祈りを捧げ続ける存在だ。
 自国にかかわることでなければ、他国の情報を得る術は徹底的に遮断されていた。

(もっと早くに、知りたかったわ……)

 己の無知を恥じるように居心地の悪そうな表情を浮かべたあと、彼の境遇を祝うことで誤魔化した。

「皇帝就任、おめでとうございます」
「ありがとう」

 陛下は「そんなことも知らないのか」と罵ることなく、素直にお祝いの言葉を受け入れてくれた。
 それが、何よりも嬉しい。

(立場や容姿は変化しても、本質は昔のままなのね……)

 彼はいつだって、己を優しい瞳で見つめてくれている。
 陛下のそばにいれば、もう二度と心ない視線を向けられることはないだろう。
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