追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(彼と別れて魔物に襲われたら、今度こそ私の命は消え失せる……)

 せっかく、ずっと会いたいと願っていた想い人と再び巡り会えたのだ。

(素直になれば、今度こそ……。幸せになれるかもしれない……)

 これが10年前の心残りを消化するために神が与えてくれた、最初で最後のチャンスならば――。
 彼の好意を拒み続け、自ら破滅の道に歩むのは止めるべきだろう。

(自問自答を繰り返していたって、答えは出ないわ……)

 ラシリネは瞳を潤ませ、ダリウスに問いかけた。

「私はあなたのそばにいても、いいのですか……?」
「もちろん」

 彼は考えるまでもなく、2つ返事で了承する。
 その後、屈託のない笑みを浮かべて告げた。

「君の意思を無視して、強引に縛りつけるつもりはない。これからのことは、ゆっくりと時間をかけて考えればいいだろう」

 ダリウスが行ったのは、あくまで提案だ。
 最終的な判断は己に委ねられている。

(彼からはっきりと命じられたら、従わざる終えないのに……)

 こちらの決断をじっと待っていてくれるのが、彼らしい。

(ダリウス様の好意を、これ以上拒むなんて……。できない、わよね……)

 目元に溜まった涙を小さな指先で拭った少女の瞳には、確かな決意が秘められている。

「よろしく、お願いいたします……」

 迷いを断ち切ったラシリネは、こうして満足そうな笑みを浮かべるダリウスの手を取った。
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