追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(彼の立場とご厚意に甘えて、本当にいいのかしら……)

 しかし、今の自分は昔と変わらぬダリウスの優しさすらも素直に受け入れられないほどに、心をすり減らしていた。

(駄目ね……。前向きにならなければいけないと、わかっているのに……)

 どうやら、己が考えている以上に聖女としての任を解かれ、自国から追放されたことに対してショックを受けているらしい。

(自国でのつらく悲しい日々は早く忘れて、陛下と楽しい思い出を作るべきだと、わかっているはずなのに……)

 ――自己主張をしたって無意味だ。
 波風を立ててはいけない。
 どんな苦しいことや悲しいことがあったとしても、黙って耐えなければ。

 そうやって精神をすり減らして黙っているのが当たり前になったせいで、陛下とどんな話をすればいいかすらもよくわからなくなっていた。

「昔と同じように、接してくれ」
「そんなこと、できません……!」

 こちらがふるふると勢いよく左右に首を振って固辞すれば、彼は心底不思議で仕方がないと言わんばかりに疑問を投げかけた。
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