追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 なのに――。

 想い人に好かれたい一心で、ダリウスはその権利を手放してしまった。

(今すぐみっともなく縋り、彼女に許しを乞おう)

 心優しい聖女ならきっと、許してくれる。
 そんなふうに甘い考えをいだく自分に、反吐が出た。

(ラシリネを愛しているからこそ、何をしても許される。そんなふうに思っている時点で、アデラプス王国の国王を批判できる立場にはない……!)

 ラシリネは、己が手を伸ばせば触れられる距離にいる。
 ちっぽけなプライドさえかなぐり捨てれば、好きなだけ腕にいだけた。

 なのに――。

 自分でも気づかぬうちに嫌悪している男と同じところまで堕ちたことに気づいて尻込みしてしまい、指一本すらも動かせない。
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